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-- 新作は楽曲も演奏も、前作を軽く上回った内容ですね。バンドの充実ぶりが伝わってきました。
ANTON(Vo/B)おぉ、ありがとうございます。
-- 前作『ASSHOLE RETURNS&THE HISTORIC COLLECTION』(2007年)が出てから7年ぶりの作品で。かなり期間が空きましたね。
ANTONそうですね。まぁ、作ろうとしなかったから。
ANDREW(Dr)メンバーチェンジとかもあったし。作る気にもならなかったね、オレが入るまでは(笑)。
-- ANDREWさんが加入したのはいつなんですか?
ANDREWこれがねぇ、分からない(笑)。そもそも「入った」と言った記憶がないんですよ。
ANTON『ASSHOLE RETURNS&THE HISTORIC COLLECTION』を録り終えて、ツアーが終わった後くらいちゃう?
-- KENTAさん(元NOBのドラマー。FULLSCRATCHが再始動してから加入)が脱退したのが2008年ですが、KENTAさんと入れ替わりで入った感じですか。
ANTON「入れ替わり」というか、二股をかけてたんですよ。
ANDREWオレは前回のアルバムのレコーディングエンジニアを担当していて、ドラムでも1曲参加しているんですけど、復活後はライブのPAとして同行していたんですよ。そしたらライブ中に突然「たたいてよ」って言われて。
ANTONANDREWがたたいた曲をやるときは「来いよ!」って言って。で、「次の曲もたたいてまえ!」って(笑)。
-- アハハハ。
ANTONで、だんだんANDREWの比重が増えていった(笑)。
ANDREWそしてクロスしていった(笑)。
-- ANDREWさんがのっとったかたちですね(笑)。
ANTON「オマエ、入れよ。PAしとる場合ちゃうで」って。KENTAは自然消滅ですね。
-- ANDREWさんはエンジニアもやっているから全曲知ってるし、その場でたたけたと。
ANDREW「オマエもう、全部たたいてよ」みたいに言われたときは、さすがに「別にいいけど、やるならスタジオに入って練習させてよ」って言って。一回だけスタジオに入りましたけど。
ANTON手っ取り早かったですね。技術うんぬんよりも人間関係というか、フィーリングなんですよね。ANDREWとやる方がグルーブ感があって。「バンドってこうやねんな」って思いましたね。
-- ANDREWさんは遠慮もないし、対等な人間関係でやれると。
ANTONもう、今ではリーダーですからね(笑)。全部まとめてくれるんで。
ANDREWアハハハ。まぁ、ぼくは最初、エンジニアとして関わったわけですけど。なので、まとめ上手なのかなと。
-- レコーディングの現場ではなおさらでしょうね。
ANDREW前回のアルバムは新曲と昔の曲が半分くらいの割合で入っているんですけど、レコーディングをするにあたって、最初は全曲KENTAでやろうとしていて。それにオレが猛反発したんですよ。FULLSCRATCHって、やっぱり1998年から2003年までのメロディック・パンク・シーンではかなり注目されていたバンドだったし。素晴らしいバンドだったとオレは思っているんですよ。そのバンドのベスト盤が出るというのに、なんで当時のドラマーを呼び戻してやらないんだ?って。KENTAのドラムで過去のFULLSCRATCHの曲を表現できるわけがないだろうって。新曲なら分かりますよ? そもそもドラマーが辞めて解散したわけですし。新しくKENTAが入って、新生FULLSCRATCHとしてやっていくわけですから、それはいいですよ。でも過去の曲は「ちょっと待ってくれ」って。
-- そこまでいくとエンジニアの権限を超えていると思いますが(笑)。
ANDREWアハハハ(笑)。
ANTONそれで大阪からKAIHATSU(オリジナル・ドラマー)を呼びましたからね。
-- そして今回のアルバムはANDREWさんのレーベル、TIGHT RECORDSからリリースされるわけで。レーベルオーナーとしての役割も加わって、さらにリーダーシップを発揮していると。ちなみにANDREWさんはFULLSCRATCHとはいつごろからの付き合いなんですか?
ANDREWファースト・アルバムの『MARVEROUS』(1998年)が出たときも名前は知っていたんですけど、知り合ったのは『ADMIRE』(1999年)と『THE GREATEST ASSHOLE』(2000年)の間の時期ですね。
YOSHIHIRO(G/Cho)確か、20歳くらいやったよ。当時は下北沢屋根裏でPAをやってたんだよね。そんで、下北沢屋根裏の上にあるレコーディングスタジオでS☆CREATERS(現LAST ALLIANCE、現discord)の録音をやっていたとかで、当時のA&Rが「ええやつがおる」って紹介してきて。そこで「ウルトラマン」のカバー・コンピ用のレコーディングをやってもらったのが最初かな。
ANTONレコーディングの前日にANDREWがバイクで事故ったんだよね。「明日は来られないかもしれない」って聞いてたんだけど、ちゃんと来たよね。
ANDREWあぁ、そうだった。
YOSHIHIROその後、『THE GREATEST ASSHOLE』のプリプロをやってもらったり、『LIAN』(2003年)のプリプロを新宿アシベでやってもらったりして。
ANDREW当時の自分にとってFULLSCRATCHはプチ・ビッグバンドみたいな感じでしたね。
YOSHIHIRO「プチ・ビッグバンド」(笑)。
-- 世代的には同じくらいですか?
ANTON同じくらいですね。
ANDREWでもオレからすると、FULLSCRATCHは一歩リードしていましたね。当時のHi-STANDARDと対バンをしているのはFULLSCRATCHくらいですから。オレらの世代ではほかにはいないですから。
ANTON言うても、オレらはもともと大阪におって、東京に来てすぐにCDを出したっていう感じで。こっちの人からすれば「ポッと出」だったと思うんですよ。「こいつらなんやねん」みたいな。
ANDREWFULLSCRATCHって絶妙な位置にいて。『AIR JAM』世代でもないし、オレら世代でもないんですよ。その間の世代というか。
-- エンジニアとしての付き合い以外に、対バンとかは?
ANTON対バンはしていなかったですね。ANDREWにライブのPAをやってもらうようになって、そこら辺からFUCK YOU HEROESをやりだしたんだよな?
ANDREWうん、それが2001年かな。
YOSHIHIROカセットテープをもらったね。
ANDREW幻のカセットテープですね。
-- 当時、SOBUTのメンバーも推薦していました。
ANTONだからずっと、演る側とエンジニア、という関係だった。
YOSHIHIRO付き合いとしては15年くらいになるんだね。
-- FULLSCRATCHは以前からスピードにこだわっていたと思いますが、その部分でもANDREWさんは適任だったんじゃないですか?
ANTONそういうイメージがあるでしょ? 実はイメージ戦略なんですよね(笑)。
ANDREW(笑)。《インディ最速》という謳い文句は当時のレーベルが考えたもので。メンバー自身は当時、それを嫌がっていたんですよ。「もっと速いバンドがいるじゃん」って抵抗があったみたいで。オリジナル・ドラマーのKAIHATSUくんは『ドラムマガジン』のインタビューでも「全然(スピードに)こだわってない」って言っちゃったりして。ただ《最速》という言葉だけが一人歩きしてしまった。「FULLSCRATCH=速い」みたいな。でも、オレが入ってから、「あえてその言葉をまた使おうよ」って言って。言い出したのはオレなんですよね。
ANTONだから今はむっちゃ《最速》推しですよ。背中に《最速》って漢字で描いたTシャツも作ったし(笑)。
YOSHIHIROANTONが筆で書きました(笑)。
-- アハハハ。
ANDREWオレは1998年当時、《インディ最速》っていう言葉を見て衝撃を受けましたからね。今でも同じように思うやつは絶対にいると思うんですよ。
-- では以前の曲もさらにスピードが上がったかたちで演奏しているんですか。
ANTONどうやろな、スピード自体は上がってないかもしれないけど。ANDREWがよく言う「スピード感」だよね? ……その話はもうええか。
-- いやいや、してくださいよ(笑)。
YOSHIHIRO話が長くなるから(笑)。
ANTONもう3回目やしね。ANDREWも恥ずかしいやろ(笑)。
ANDREWあの……みんなの前でまた話すのは嫌だな(笑)。例えばTIGHT RECORDSから出しているBaby smokerというバンド(《西日本最速》というキャッチコピーのつくメロディック系バンド)とか、言っちゃえば彼らの方がBPMの数字上では速いんですよ。ウチらの最速の曲でBPMが235なんですけど、彼らは240の曲があって、もっと速い。でも、同じBPMでやったとしても、オレがたたく方が絶対に速く感じるんですよ。むしろBaby smokerの240の曲よりも、オレらの235の曲の方が速く感じるくらいで。
-- そのポイントはなんでしょう?
ANDREWそれは教えられないです(笑)。要は、キックとスネアのバランスなんですけど、それはオレにしかできないものなんです。数字上のスピードではなく、体感速度ですよね。以前、FUCK YOU HEROESのコピーバンドがあって、そのライブを観たことがあるんですけど、めちゃめちゃ速いんですよ。終わった後に「オマエ、速過ぎだよ」って言ったら、「いや、こんなもんですよ」って。実際はそんなに速いものではないのに、彼らはそのくらいのスピードで体感していたんですよね。だからまぁ、そこはオレの技術なのかなって(猛照笑)。
-- 確かに、ANDREWさんは2ビートだけじゃなく、いろんなビートを組み合わせていますし、フィルの入れ方が凝っていますよね。それが疾走感につながっていると思います。
ANDREWそうですね。あとはドラムだけじゃなくて、そこに絡むギターのザクザクしたリフとか、歌ののせ方も関係していますし。それがFULLSCRATCHの最速たる所以ですね(笑)。
ANTON2曲目の「THE GREATEST FASTEST」という曲ではそういうことを歌っているんですけど。たしかANDREWはこんなことを言ってたな、って。ANDREWがそう言い出してからはオレらも「速いのもオモロいな」みたいな感じで、推していこうってなりましたね。
ANDREWこれまでFULLSCRATCHは日本語の曲をやったり遅い曲をやったり、いろんなことをやってきましたけど、自分がFULLSCRATCHをやるとなった以上、やっぱり初期のFULLSCRATCHみたいな音をやりたいって強く思って。実際、ライブでも今は初期の曲しかやっていないし。日本語の時代の曲も嫌いではないんですが、やりたいことはそうじゃないんですよね。
ANTONだから今回のアルバムも、「速くて、リフでガンガン攻めていく感じの曲を作っていこう」ってなって。もう3〜4年も前の話ですけど。コンセプトはそれだけでしたね。
-- それこそ初期に立ち返った感じで。
ANTONそうですね。きっと、それがFULLSCRATCHっぽいんやろうなって。あらためて見つめ直してみたら、そうやなって。録り終わったのを聴いて、まさしくFULLSCRATCHっぽいのができたと思いました。
ANDREWお客さんも喜んでくれそうな気がするな。
INTERVIEW BY indies issue 岩崎 一敬
Vol.02 へ続く
──ここでmasasucks(G)が到着──
masasucksどうもすみませんでした〜。どんな罰も受ける所存です〜。
ANTONまだ酔うとるやろ(笑)。
masasucks酔ってる(笑)。
ANDREWまだ一つ目の質問だから。
masasucksオーケー。今回のアルバムは14人で20年ぶりに作った14曲──。
ANDREW「14人で20年ぶり」!?……なんか酒臭え(笑)。
masasucks全14曲28分の大作でございます!
ANDREWそんな話は聞いてないから(笑)。今は最速の話をしていて。そう、やっぱり初期衝動をしっかり出そうぜ、というコンセプトですかね。
-- masasucksさんがいらっしゃったのであらためてうかがいますが、ベテランといえるキャリアのあるバンドがもう一度初期のサウンドに立ち返るっていうのは、なかなかできることではないと思うんですよね。やっぱり、ちょっと違ったことがやりたくなるでしょうし。だから今回のアルバムをどんな思いで作ったかというのは、ぼくとしてもぜひ聞きたいところでした。
ANTONまぁ実際、いろいろやってきたんでね。一周回って、また戻ってきた感じですね。このバンドでいちばんやりたいのはどんなことやろなって考えたときに、この4人だったらこういう感じかなって。自分たちがやりたいことでもあるし、お客さんに求められているのもこれでしょうし。これしかないわな、っていう感じですかね。FULLSCRATCHがFULLSCRATCHであるための音ですね。
masasucksええこと言うな。
-- そして、そういう初期のようなキャッチーでアグレッシブな勢いのあるサウンドを現在の成熟したスキルで作っているというのがポイントですよね。ファンにしてみたらすごく理想的だと思います。
ANDREW『MARVELOUS』、『ADMIRE』とかのころよりも経験値としては数段上がっているはずなんで。その中で当時のようなことをやったらどうなるか?って思って取り組んだんですけど。……でも、ギターのミュートしながらの刻みはちょっと退化したよね(笑)。「昔みたいに速くできねえ!」みたいになってて(笑)。
YOSHIHIRO頑張って刻んだつもりですけどね。座って弾きましたけど(苦笑)。
masasucksレコーディングではなんとか弾けたけど、ライブではどうするんだ?っていう(笑)。
ANDREW知識だけはついて、腕が追いついてない(笑)。
YOSHIHIROこういう音楽はアスリート的なところがあるからね。やっぱり歳をとると衰えてくるところがある(笑)。
ANDREWだからみんな、遅い曲をやるようになるんだろうね。
-- でも、ギター・ソロはかなり弾きまくってますよね。
YOSHIHIROそうですね、ギター・ソロは結構やりましたね。
ANTONそういう方がカッコええですやん。ギタリストはやっぱりギター・ソロを弾いてなんぼやと思っているんで。弾き倒している方がカッコいい。
masasucksましてやFULLSCRATCHはギターが二人おるからハモれるっていう。
ANDREWさっきも少し話に出ましたけど、今回のアルバムを作ろうってなったのは実は4年も前のことなんですよ。「この4人での音源が一枚もないし、やろうよ」って。そこからどうしてここまで時間がかかったのか(笑)。なんでだろうね?
ANTONみんな最初は冗談やと思ったんちゃう?
ANDREWえ〜!?(笑)
ANTONそのときは「ええな、作ろう!」みたいになったけど、誰もその気にはなってなかったよな。その次の日にはもう忘れていました(笑)。
ANDREWそのときの会話では「『ADMIRE』みたいにリフで攻める曲を作ってよ」ってYOSHIHIROくんに言ってたけど。実際、ちょっとずつ曲を作ってくれてたよね?
ANTON1曲、データで送ってきてくれたよね。その後3〜4年寝かされてたけど(笑)。
masasucks「16years」やね。
ANTONみんな、「大したことない曲やな」って当時は思ったんですよ。
masasucksボツにしてやろうと心の底から思って、4年間ずっと「これはボツやろ」って言い続けていたんですけど、ANTONが歌を入れだしたらホロっときてしまって(笑)。
ANDREWずっと「ボツだ」って言ってたのに、急に「これはいい曲だねぇ」って言い出して(笑)。
-- ほかの曲は?
YOSHIHIROちょこちょこ作ってはいました。1ヵ月に1曲とか、3ヵ月空いて2曲連続して送ったり。それで曲が溜まってきて、ようやくアルバムのかたちになりそうだなってなってから、頑張ってまた作り出して。
ANTON10曲集まった段階で3ヵ月先くらいにスタジオを押さえたんだよね。そうしないと録る気配がまったくなかったから。そしたら尻に火がついて。
-- 曲は基本、YOSHIHIROさんが作っているんですか?
ANDREWフロント3人とも曲を作るんですけど、今回は7割方、YOSHIHIROくんがもってきたのかな。基本的にはギターと宇宙語の歌が入ったものがデータで送られてくるんですよ。そこにオレがドラムを打ち込んで送り返すっていうやり方が多かったですね。そこからおのおのがイメージを膨らませていって。
YOSHIHIROスタジオでみんなで作ったものもありますし。
ANDREW masasucksはドラムも入れたものを作ってきて。あとはRADIOTSでボツった曲が1曲。
ANTON……ん?
masasucks「FULLSCRATCHのために作った」って言い張ってたけど(笑)。
ANTONちゃんとオレが歌うのをイメージして作ったんや。
masasucks最後までみんなが手を付けようとしなかったね(笑)。
-- しかし全曲、王道的なキャッチーさがあって粒揃いですよね。それこそファースト・アルバムだったらポンポンできるかもしれないですけど、やっぱり枯渇もしていくでしょうし。なかなかできないことだと思いますよ。
YOSHIHIROぼくはそんなに意識してなかったんですけど。逆にいえばキャッチーなものしか作れないのかもしれないですね。まぁ、3〜4年も作っていたんで。いいメロディーが思い付いたら残しておいて、少しずつ曲にしていきました。
-- もともと影響を受けたものとしてはどの辺が大きいんですか? 全体的には90年代のアメリカ西海岸のメロディック、Fat Wreck Chords系の匂いがありますけど。
YOSHIHIROうん、個人的にはいろいろあるとは思うんですけど、バンド的にはそうですね。NOFXをよく聴いていたんで。
ANTON最初のきっかけはそんな感じですね。NOFXカッコええな〜、こんなんやってみたいなって。たぶんそんな簡単なきっかけですよ。
-- FULLSCRATCHが結成された1997年当時はハイスタを筆頭に、日本でもそういう音が盛り上がっていましたよね。
YOSHIHIROハイスタのライブもよく観に行きましたね。20歳くらいのころかな。
ANTONめちゃめちゃ盛り上がってましたね。大阪のイベントとかもよう入ってました。
masasucks面白かったですね。ベイサイドジェニーで『SKATERS NITE』とか『RHYTHM RHYME & CORE』をやっていて。各地方からイケてるバンドがいっぱい集まって。
ANTON年齢的にはオレらとほとんど変わらなかったと思うんですけど、当時、オレらはまだ世に出ていなくて。天王寺で細々とやっていましたね。東京に出てきてCDを出してからですね、オレらは。
-- 日本のバンドからの影響も少なからずあるんでしょうか?
YOSHIHIROそうですね。でも特定の誰か、というのはないかもしれないです。日本人っぽくやるのが嫌や、というコンセプトがあったんですよ。日本のバンドとは一線を引きたかったんでしょうね。海外のバンドっぽいサウンドでカッコよくやりたかった。
-- そこから長い期間を経て、今再び初期の音に立ち返っているわけですけど、キーワードとしては激しいリフ、キャッチーなメロディー、速いスピードと、すごく削ぎ落とされたもので。
masasucks今さら背伸びをする歳でもないし。おのおのから自然に出てくるものを等身大にやるだけっていう。
ANDREWだから音作りもブレてないですよね。いわゆる西海岸系寄りの音に自然となりましたね。
-- 変な話ですけど、それが90年代的なサウンドでもFULLSCRATCHのメンバーがやっているんだから、今が2014年であっても不思議ではないというか。
ANTONそうですね。今回はそんな感じのサウンドですね。
masasucks確かにオレらは90年代のサウンドで育った人間ですけど、言っても、前に進んでやっているわけで。後になってこれが「2010年代のサウンドだね」って言われるようなものを作りたいですね。
-- 成熟したスキルと自分たちを客観的に見られるようになった視点で総括しているという点では、今だからこそできたアルバムといえるかもしれないですね。
ANTONうん。ファースト・アルバムから16年間、いろんなことをやって。FULLSCRATCHでもいろいろ挑戦してきたし、個々でもいろいろやったし。一周回って、いろいろなことが分かった上で「FULLSCRATCHは必要やな」ってなってるんですよね。そこでアルバムを作って、しっかり活動を見せていきたいっていうのがあったんで。だから16年間かかってたどり着いた、今のスタイルですね。
-- ゲストとしてはウエノコウジさんが参加されているそうですが、どの部分で?
ANTONベースを弾いてもらいました。
ANDREW2曲目の「THE GREATEST FASTEST」ですね。
masasucksもともとは、武藤昭平 with ウエノコウジのレコーディングにぼくが遊びに行ったときに1曲、ギター・ソロを弾かせてもらったんですよ。そのお返しに、みたいな感じで。
ANTONあとは、THE CHERRY COKE$のスズちゃん(SUZUYO)がたまたま個人練習に来ていたので、お願いしてブルースハープを入れてもらいました。で、機材車にバンジョーが載っていたのでmasasucksが即席で弾いたり。あとは、GOOD4NOTHINGのメンバーがコーラスを入れてくれましたね。これは知らん間に入ってたんですけど(笑)。
ANDREW別件でGOOD4NOTHINGのメンバーがぼくのスタジオにレコーディングしに来ていたんですけど、「そういえばFULLSCRATCH、レコーディングしてたよね。聴かせてや」って言うんで聴かせたら、「これ、入れようよ」みたいになって。勝手に入れたっていう(笑)。
-- 歌詞は全曲、英語詞ですね。
ANTON日本語詞でやった時期もありましたけど、やっぱりオレが思うFULLSCRATCHは英語詞やなって。それは最初から決めていました。
-- 怒りやユーモアが交じりつつ、1曲目「Always Rising After Fall」では、《諦めない限り、生きている限り 道は続く!》と歌っていますね。
ANTONちょっと真面目すぎましたね、すみません(笑)。
YOSHIHIROええ歌詞ですけどね。
-- こればバンドの活動に重ね合わせているんでしょうか。
ANTONいや、ちゃいますね。もっと広いもんですね。震災とかそこら辺に関することですね。10曲くらいテーマを決めて、バーッと書いたんですけど。普段、公の場でメッセージを発することはしないので、歌詞くらいは言いたいことを言っとこうかな、という感じですね。
-- 「16years」はFULLSCRATCHのことですよね。
ANTONこれはそうですね。久しぶりにアルバムを作るし、16年間を振り返った曲を作ろうと思って。
-- 《来てよかったのか?》《後悔は負けを意味する》みたいな、迷いを感じさせる言葉がありますね。
ANTON東京に来んかったらもっといい人生があったかもしれんなって。まぁでも、そんなに後ろ向きな歌ではなくて。基本的にオレは前向きな歌しか作れないんで。最後には来てよかった、という答えにはなっているんですけど。
INTERVIEW BY indies issue 岩崎 一敬
Vol.03 へ続く
-- 思えば、2003年に解散する以前はコンスタントにリリースしていたわけじゃないですか。復活した後にもメンバーチェンジがあったとはいえ、かなり期間が空きましたよね。復活後のモチベーションというか、今はどういう思いでFULLSCRATCHをやっているんでしょうね。
ANDREWなんだろうね、プロレスでいえばファミリー軍団になっちゃった感じなんですよ。現役でベルトを賭けてバリバリやるというよりは、二試合目に第一線を退いたジャイアント馬場が永源遙とやる、みたいな(笑)。……プロレスに詳しい人じゃないと伝わりづらいかな。
-- いずれにしても以前とはちょっとモードが変わっているわけですね。
ANTONうん、ちゃいますね。
ANDREW解散する前は「バンドで食ってやる」という気持ちをもって全員で東京に出てきて。そしてアルバムを何万枚と売って、ライブをやればソールドアウトして──っていう、バンドの目標をちゃんとかなえたわけじゃないですか。解散した後も、メンバーはそれぞれ音楽活動をしていて。それがひょんなところから復活したという流れですけど。やっぱり当時のテンションと同じようにはできない気もするんですけどね。
ANTON以前と同じように活動する必要もなかったんですよね。もっとユルい感じでええんちゃうかって。ダラダラでいこうや、って。
ANDREWだからライブでも酒は飲むわ、もう、メチャメチャなことをやってるんですよ。対バンをする友達とかも、みんな驚くというか。逆に羨ましがられますね。
-- 仕事でもないし、義務でやるでもないし。伸び伸びとやっているんですね。
ANDREW誰からも文句を言われず、伸び伸びと酒を飲みながら。ライブ前に声出しもしないし。スティックもオレ、このバンドではドラムセットに座るまで触らないですからね。リハもやらないし。FULLSCRATCHはライブ=飲む、みたいになっちゃってる(笑)。
ANTONええ・悪いは分からないけど、「こんなかたちもあるよ」っていう。バンドなんて楽しくてなんぼっていうか。オモロくてなんぼやから。
-- パンク・バンドは本来、そういうものかもしれないですしね。
ANTONうん。ストイックさを出したらこのバンドはアウトやから。
ANDREWライブは本当、シェルターに飲みにいって、ステージがあったからちょっとライブやってみる?みたいな(笑)。外国のパブみたいなノリなのかな。
ANTON演奏している時間よりもしゃべってる時間の方が長いこともあるし。masasucks SEが流れても誰も出てこない。2周目のSEが流れてようやく出てくるっていう(笑)。
-- では、再始動したのは「いま一度」という感じではなかったんですね。
ANTON「もう一回頑張ろうや」みたいなノリではないですね。一回ライブをやる機会があって、やったら「オモロいな」ってなって。それだけですね。せっかく集まったし、また解散するのもしんどいし、ボチボチやっていこうやっていう。
-- ちなみにTHE TROIKA(FULLSCRATCH解散後にANTONとYOSHIHIROが始めたバンド)はどうなっているんですか?
ANTONもう、とっくにないですね。
YOSHIHIRO自然消滅しました(笑)。
-- ANTONさんはRADIOTS、masasucksさんはthe HIATUS、ANDREWさんはFUCK YOU HEROESとBBQ CHICKENSをやっていて。YOSHIHIROさんは?
YOSHIHIROちょこちょこやってますよ。サルバンドっていうバンドでアコギを弾いたり。
-- それらの活動があるからFULLSCRATCHはユルい気持ちでやっていると。
masasucksユルくはなってないです。
YOSHIHIRO人から「ユルい」と言われると「いや、そうではない」っていう(笑)。まぁ、バンドって本来こうあるべきじゃないの?っていうスタイルですね。あんまり肩に力が入ってない、ダメなヤツらがやってるっていう。
ANTON力を抜くっていうのは実は難しいんですけどね。むしろ、ちゃんとやる方がラクなんですよ。ユルさで何かを表現するというのは本当に難しいですわ。しゃべりで笑いをとらなあかんし。オレはそこでいちばん神経をすり減らすんですけど(笑)。
-- 実は真面目なタチなんですかね。
ANTONいや、その場でしか考えたことしか言わないんですけど。そこでウケんかったら「今日はあかんライブやったな」って思うし。ウケたら「演奏は一個もうまく弾かれへんかったけど、いいライブやったな」って思うし。普通のバンドとは「ええ・悪い」の基準が違いますね。
masasucksステージの上でもやじり合ってるしね。近所のツレで集まってライブをする、みたいな感覚があるね。
ANDREWオレ的には本当、飲みにいく感覚と一緒ですね。実際、リハが終わって飲むわ、ライブ中も飲むわ、ライブ後も飲むわ。もう、ライブが決まった時点で飲みが確定したつもりでいますね。日曜日におじさんたちが草野球しに集まろうぜ、みたいなノリですね。
ANTON一緒一緒! だから、そんなに期待されて来られても困りますわ。
ANDREWアッハッハ!
masasucks一塁までは「おっ、当たったな」ってダラダラと走っていくんですけど、その代わり二塁三塁の盗塁はむちゃくちゃ本気でやる、みたいな。「そこ頑張んのや」みたいな爆発力はあるよね。メンバーをどうやってびっくりさせてやろう、とかもあるし。いきなり訳の分からないことを言ったり。イントロをやって、いきなり中断することもあるし。
ANTON音が出ないようにギターのネックを押さえますからね(笑)。
YOSHIHIRO普通は曲をやり直すのはカッコ悪いじゃないですか。でも、やり直すことで逆に盛り上がるというか。そういう雰囲気を大事にしていますね。
ANDREW笑い過ぎてたたけなくなることがあるもん(笑)。勘弁してくれよ、みたいなときがありますね。オレはエンジニアという仕事をしているから、ライブ中に曲が止まったりしたら絶対に怒るのに、自分がそこにいると怒る気にもならないというか。むしろ、そこでみんなが笑ってくれた方が面白いんですよね。
ANTONええネタ、みたいなもんですよね。最近はセットリストも決めないでライブをやりますしね。その場で「何をしようか」って考える。
masasucks一回、名古屋でライブをするときにオレがセットリストを書いたんですけど、曲の頭文字だけを書いたんですよ(笑)。
ANDREW分からな過ぎて、予想でやってましたね(笑)。
-- 野心はないにしても、また別のベクトルで追究している部分があるんでしょうね。
ANTONただ単に身内でふざけとっても面白くないし、観ている人も不快やと思うんで、お客さんも巻き込んでいかないと。簡単にはできないですね、こういうバンドは。
ANDREW真面目にやり過ぎている後輩のバンドたちにとってはいいメッセージになっているのかな。
ANTON「こんぐらいでもええねんぞ」って。
masasucksステージでのテンションは半端なく高いですけどね。酔っぱらっているからかもしれないですけど(笑)。あらためて考えてみたら、以前よりもテンションは高いかもしれない。
ANDREW以前はライブ前とかに飲んでなかったよね。
ANTONうん、案外ちゃんとしとったよ。
-- 今の活動ペースはどんな感じなんですか? ライブとか。
ANTONこの3年くらいは月に1回あるかないかですね。
-- 練習は?
ANTON一切しないです。
YOSHIHIRO今年は1回だけ入ったけど、こいつ(masasucks)は来えへんかったし。
ANTONANDREWも遅れてきて。だから10分くらいしかできなかった(笑)。
-- まぁ、曲は長い間やっているから覚えているでしょうし、基礎練習は普段からやっているでしょうし。今回の新曲はすでにライブではやっているんですか?
ANTON1曲目の曲を1回だけやりましたね。
masasucksみんなで「せーの」で合わせたのはそのときが初めてちゃうかな。
-- 録音を聴くかぎり、演奏のノリはバッチリですよね。そんなに練習していないとは思わせない仕上がりですよ。
ANTONそこはもう、持っとるモンですね。
ANDREWそれなりにやってきたと。
masasucks逆にオレは問いたいけどね。例えば週に2回とか練習したら一体どんなバンドになるんだろう?って。
YOSHIHIROオモんなくなるんちゃう? そんなにガチガチやってもね。上手すぎると「どうや?」みたいになるじゃないですか。そういう雰囲気はあんまり出したくない。
-- 上手いけどテクニカルに寄り過ぎてはないですし、いい塩梅ですよね。じゃあ、ライブのときしかメンバーとは会わない感じなんですかね。
ANTONいや、普段から飲んでますね(笑)。
masasucksみんながそれぞれやっているバンドのライブを観に行ったり。
ANTON会ってもFULLSCRATCHの話とか、ほとんどしないけど(笑)。
-- 基本、仲がいいんですね。
masasucksいや、どうですかね(笑)。
ANDREWメンバー同士で飲みにいくバンドって意外となくて。外からはすごく仲良しだと思われますね。
-- 今、ライブの動員はいかがですか?
ANTON相変わらずですね。大したことないです。
YOSHIHIRO毎回、固定のお客さんが来てくれています(笑)。
-- 前回のアルバムは、セールス的にはどうだったんですか?
ANTON失敗ですね(猛爆) でもまぁ、こんなもんやろな、って。FULLSCRATCHにかかわらず、今は売れることに対しては期待してないですね。だから枚数とかは気にならないです。
-- 今回は純粋にANDREW さんが加わったかたちでの音源を作りたかったと。
ANTONそうですね。
masasucksANDREWはPAとして一緒にツアーを回っていたころから「背中にTIGHT RECORDSのロゴが入ったTシャツを作りたいね」ってずっと言ってて。
ANDREWようやくそれがかなおうとしていて、オレ的にはすごくうれしいんですけどね。
-- では最後に今後の意気込みを。
ANTON意気込みはないんですけど(笑)。まぁ、ファースト・アルバムから16年間、いろんなことをやってきて。FULLSCRATCHでもいろいろ挑戦してきたし、個々でもいろいろやったし。一周回って、いろいろなことが分かった上で「FULLSCRATCHは必要やな」ってなってるんですよね。これが本来のバンドのあり方っていうか。真剣にどこかを目指していくのももちろんいいですけど、今はそこを経て、この4人でやるのは面白いなっていう。そこでアルバムを作って、しっかり活動を見せていきたいなっていうのがあったんで。だから16年間かかってたどり着いた、今のスタイルですね。
-- アルバムが出た後はツアーを予定されているんでしょうか。
ANTONそうですね。あまりたくさんは回れないですけど。まず第1弾として東京、名古屋、大阪、福岡、仙台くらいは行って。行けなかったところはまた別の機会に、ゆっくりでもいいから行こうと思っています。
ANDREWけっこう全国にFULLSCRATCHチルドレンがいるんですよ。「当時のFULLSCRATCHに憧れてバンドを始めました」みたいなバンドが今、一線で活躍していたりして。「一緒にやりたい」っていう声がめちゃめちゃ多いんですよね。そういうバンドたちと第2弾のツアーをやるのもいいかな。まぁ、楽しいツアーになるんじゃないかな。
-- 全国各地でお酒を飲むんでしょうね。
ANDREWまぁ、飲むでしょうね。誰が運転するんだ?みたいな話にもなりそうですけど(笑)。
ANTONツアーもほんま久々やから、昔観に来とった人たちとか、「まだやっとんか!」って笑いに来てくれたら、それだけでええかな。
ANDREWハイ・クオリティーな演奏は期待しないでください(猛爆)。飲み屋に行く感覚で来てほしいですね。本来のFULLSCRATCHの姿が見られると思います。
ANTON最高峰の茶番を見せたいですね。所詮は茶番なんですよ、オレらは。でも、他人にはできない茶番ですから。
INTERVIEW BY indies issue 岩崎 一敬